8月7日 日報
ジョン・クラーク
火星歴19日

昨日の午後の晴れの天気で、温度も上がり、温かい夜だったが、今朝は雨の音で目が覚めた。そのため、本日のEVAは天気が回復して安定するまで保留にした。クルーは記録を作成したりサンプルにラベルを張ったり、プロジェクトをこなしたり、そしてハブの清掃、整理整頓、廃棄物の焼却処分といった施設の維持管理作業をこなした。アナスタシアはロフトを整理し続けているが、数週間の作業の後、最終的には7人目のクルーの個室として使用可能な状態に整えた。未来の7人目のクルーが来ても大丈夫なように。

昼食後、天気は安定してきて宇宙服着用のEVAも可能な状態になった。ポールはEVAをリードし、私は支援をした。ユースケは猟銃を携帯した。我々の目的は二つ。最初はポールのためにポリゴンで溝を掘ること、二番目はスロープの地形を三次元(3D)撮影することであった。両方とも成功裏に実行され、同時にチキソトロピック(揺変性という意味、ある物質が外からの負荷等により形状を変えるものの負荷がなくなると元に戻る性質)土壌をサンプル採取出来た。ポールは単独のシワのある綺麗なサンゴのサンプルを見つけた。ハブ近くの小さなオアシスで、多種多様な植物相を発見し、私たちの間で多くの議論の的となった。

これで、狂気の火星の月曜日を終わろう!

8月7日
ジャーナリストリポート
アレクサンドル・マンジョ

あなたにとって異界とはなんでしょうか? 私にとって北極は「異界」(alien world)である。呼吸している空気は別にして、それ以外すべては私の感覚では普通ではない。樹木もなくグリーンもない。まあ、花々はあちらこちらに咲いている。でも岩石の世界の厳しさを克服できるものは何もない。時々、玉石のトップ表面に高密度のオレンジ色の層を見ることが出来る。丁度、巨大な絵筆で風景のもっとも高い部分にだけオレンジ色で塗った感じみたいだ。このオレンジの層は地衣類(注:菌類と藻類とが共生して一体となっている植物)であり、墓地でよく見かける、ある種の花である。恐らく、北極キツネがこのエリアに生息しているらしく、乾燥して白くなった糞と骨がいたるところで見受けられる。こちらでは、ある種の生態系の中で、一部の生命が繁栄し、ほかの生物は死に絶えたのだろう。

私たちはクレータを探索している。ここの岩石は惑星地球のものではないようにも思える。それらには識別可能なパターンが見られない。大部分の岩石の表面は荒っぽい。見た感じはスポンジに似ているが、裸足で歩くと、粉々に割れたガラスを接着剤でくっつけたようにも感じる。岩石の色は、私が無意識に規則的に認識する岩盤(床岩)の色とは異なる。ほとんどの岩石の色は全体的には灰色がかっているが、ときにはオレンジ色に近い明るい黄色もある。或いは、ソフトな白い石にダークブルーの色合いが含まれる場合もあるし、あるいはコンクリートのような、白っぽい感じの岩石に微細な石が含まれているのも見られる。


FMRAS施設はクレータの縁(リム)から20メートル程離れている。数日間は霧に囲まれる。霧は非常に深く、クレータの底が見えないこともある。一階の窓から見ると、床岩が空中に浮かんでいるように見え、雲の中を飛行しているように感じる。霧が晴れると、クレータは沼地のように見える。

すべてのものが濡れている。岩石が砂に変わった場所では泥(スライム)状態になっている。それらはソフトで滑らかではあるが、ほとんどの砂には冷たい水がしみ込んでいる。岩石がある場所では水の中に浸っているのが見える。全体的なイメージは湖の上に浮いている感じである。岩石はしっかりしているので、上に乗っても転倒する心配はない。若干の泥の場所では底無しで、瞬時に吸い込まれそうな感じがする。クレータの斜面には微生物が長い帯状に生殖しているのが見られる。この生殖形態は、斜面を流れ落ちる高温のアスファルトのように黒い筋状を呈している。このシアノバクテリア(藍色細菌)は、自身を黒い物質で覆うことで、太陽の紫外線を遮断している。でも、実際のところ、太陽はどこにあるの? ここひと月の間、太陽をほとんど見たことが無い。


火星に行きたい!

 

8月7日
コマンダーリポート
アレクサンドル・マンジョ

今日の午後のEVA一回は宇宙服なしで行った。濃霧だったけど、EVA活動をするには十分の視界が確保できたので許可した。


宇宙服の3Dモデルを作成中のアレクサンドル


サンプル処理するアヌシュリー


マイクロオアシス


ポリゴン地帯


葉の化石


ハイポリスサンプル採取のアヌシュリーとユースケ