【MARS160現地レポート60日目その3・11/30】
これまでの60日間のまとめ。(このレポートはコマンダーのアレクサンドル・モンジュールがクルー各人に提出を求めたもの)

●ジョン・クラーク(地質学者)
地質学者として、今回のミッションで多くのことを学びました。これまでやってきたMDRSの周辺の堆積物調査と全体の地形の歴史の研究をさらに拡大することができました。
さらに、組成配分を制御している環境因子を明らかにするために、石下生物の研究に役立つ基礎的な土壌特性を計測するができました。
この分野の科学的理解が深まったことが重要であることの意味は、この火星模擬環境条件のもとで研究活動が行えたことにあり、しかも模擬宇宙服を着用し、4輪バイクに乗り、電動ローバを使い、移動のためにハブカー(現地で使用する自動車)を使い、フィールドではすべての通信能力が制限され、当然、基地のインタンーネット能力も極めて低く制限されている。
この状態でも、過去の制限されたEVAによる貴重な科学研究のみならず、今回のように複数の分野の科学プログラムの一環として数か月間連続して科学研究が可能であることが今回示されている。さらに、より複雑なミッションサポートが機能していることは大変有益なことである。
今回は長期ミッションであるため、MDRSのクルー全員がミッションサポート体制の中で活動しているが、このサポートプロセスに関連する挑戦課題も多く学ぶことが出来た。
よくある問題だが、監理管制体制とクルーの自律性のバランスの取り方はしばしば議論となった。そしてのことから学んだことは、実際の火星ミッションに応用可能であるだろうし、管制センターが期待する管制体制は、火星と地球との通信時間差と通信速度の制限によって影響を受ける現実の状況によって変更を余儀なくされるであろう。
ほとんどの人が私に言ったのは、「そこにいて何をするの?」という問いであった。現実の基地での生活は絶えず活動し続け、多くは定常的な作業であったり、集中して行う作業だったりする。
ほぼ3か月間のここでの生活から、効率的な施設の設計の重要性と、定常作業の可能な限りの自動化が望まれることを学習した。このような学習内容はMDRSのような施設の建設によって初めて可能であり、同時に、新しい基地の建設には学習内容を是非取り入れるべきでしょう。そして未来のクルーによってこれらの実効性をテストできるでしょう。
もう一つ、MDRSのミッションで浮き出てくる一般的な期待値とは、クルーの人間関係の問題である。私たちのように閉鎖環境で人間が住むということは、人間同士の対立という不快な混乱状態と対人関係の問題を抱える結果になると予想されている。しかし、実際はまったく異なる結果となっている。もちろん多少の意見の相違というはあるけど、残り半分のミッションにも皆と一緒に仕事をしたいと望んでいる。
ここでの生活は悪趣味のSFやTVで描写される内容とは全く異なっている。

 

【MARS160現地レポート60日目その4・11/30】
●Claude-Michel Laroche – Crew Engineer
クロード・ミシェル・ラロシ(エンジニア)

Mars160の半分は科学についてである。私にとっては、クルーエンジニアとしては、科学についてはそれほど多くの作業をする必要はなかった。私の役割は、科学研究を行っている施設が順調に稼働し、最良の状態で確実に施設が使用できるように維持管理することである。そして80日間の中で可能な限り最善の実験が行えるように努力することである。
居住棟はすでに建築後16年を経て古くなっており、複数の新規施設に囲まれている状態である。そして依然として建設当時のシステムが若干残っている。すべてが順調に機能していることを確認する作業は、ますます増加する困難を伴っている。
このような事実から、MDRSは火星に最初に降り立つであろう人間をシミュレートする世界で最高の施設の一つであると思います。MDRSに対する沢山の愛情が必要なだけではなく、科学分野での極限環境の居住模擬施設としては最高の科学研究施設の一つだと思います。
これまでの8週間の中で私が注目したシステムのうち、水加熱とポンプシステム、真新しい宇宙服、空気加熱システム、電力分電システム、健康とフィットネス関連導入、それに若干の構造的な検査と設備導入等は注意を要した。
私は植物プラントプロジェクトの主任オペレータにも任命されました。プロジェクト調査者としてHava製貯湯タンクの助けを借りて、プロジェクトサポートエンジニアののダニエル・ツコウスキ、プロジェクトの主要クルーメンバーへルパーのユースケ・ムラカミとアレクサンドル・マンジョ、彼らの協力のもと、我々は植物をモニターするコンピュータシステムを使ってクルーの行動の修正を評価するためのワーキングシステムを確立する必要があった。さらに、クルーの植物プラントへのアクセス方法を評価し、クルーの生命と健康のモニタリング手法も検討した。
今回の前半のミッションでは全システムが使用可能かどうかに集中して作業を行った。そしてすべての問題を処理し、北極でのミッションに備えた。
個人的な率直な意見を言うと、このミッションは最初から最後まで激務に追われ、特に植物プラントの設置作業は極端に疲れた週でした。我々が直面したサポートと通信制限の中でクルーメンバー全員が限りられた時間内で実績を残せたことに大変誇りに思います。
クルー全体は、研究チームによって、そして我々自身によって与えられたすべての目標の完遂に向けて一致団結することができました。残りの2週間で行う多くの作業が残っていますが、ここですでに次のような言葉をいいたいです。つまり、今回は偉業を成しとげたし、残り半分の北極でのミッションでも同じレベルの実績を達成するために、もっと激しく作業を行うでしょう。
すべてのことを正しく完璧に行っただろうか? 我々は火星に住むに適した完璧なクルーだろうか? 絶対にそうではないだろうけれど、そこが学ぶポイントであり、実際に火星に住む人間が到達すべきポイントである。

 

【MARS160現地レポート60日目その5・11/30】
これまでの60日間のまとめ。(このレポートはコマンダーのアレクサンドル・モンジュールがクルー各人に提出を求めたもの)
●Annalea Beattie – Crew Journalist
アナリー・ビーティ (ジャーナリスト)

あなた方に最後に記事を書いた時から季節は変わり政府も変わった。でも私たちは火星におり、その世界はたいへん小さいものです。
私たちはほとんどどこにでも居ることができました。大部分の活動内容は決まっており、生活も同じ感じです。時間管理は今後検討を要する点です。現在はミッションの中間点の段階にいるが、毎日のブリーフィングと午後の任務報告は毎日の重要な作業となっている。
この定期的なミーティングは仕事量のバランスを取る上で良い機会となっており、しばしば要求がぶつかり合うこともある。それがあることで、チームの一人として働いていることを実感する。
自分の研究を二番目、三番目、あるいは4番目に置く方法を学んだ。とくに何時間ものペーパーワークが要求されるときには自分の研究をわきに置いた。自分の研究とは、実験を通して得たデータの改善手法を見出すことである。例えばデータの値、模擬的に行う地質学探査の道具と技術のドローイングなどである。
でも、予想していたよりもはるかに多くの時間を宇宙服のドローイングに費やしている。そして今回は複合分野で教育を受けたジェネラリストとして多くの時間をEVAに費やした。
私個人の研究は進化した。なぜなら、この火星模擬環境の中での科学に完全にはめ込まれているからです。
このことは私にとって最高の学習環境であり、私がたいへん好きな何かを探究する重要な機会を与えてくれる。
そして先月、私にとって明らかに特出すべきことがありましたし、そのことで一日が歌を歌わせるような何かでした。(注:おそらく誕生日を祝ったことを述べているとと思います。)
クルーは今ではお互いに知り合いになりました。私たち全員が会うとき非常にいい感じを持ちました。先月は、各クルーメンバーがこのミッションに持ち込んだものに大変感謝します。その一部として私はお互いに気にかけ、お互いに助けあうことを学んだことに気が付きました。一緒に働いているときもそうですし、お互いに尊重しあい、必要と感じ、互いの限界を認め合うことを学びました。
私にとって、我々にとって最高の時間は一緒に食事をし、価値ある休暇を一緒にリラックスして楽しむときである。